lulululunlulululun’s diary

文芸ユニットるるるるん。 UNIとかとうひろみは3月クララと走りだす

9月16日(土)

9月16日(土)
【かとう】桐生へ。今回の旅の目的は、るるるるんでお世話になっているアーティスト、唐澤龍彦さんの個展へ行くため。なんとなくクララと一緒に行けると思っていたので寂しい気持ちで荷物を山と道のリュックに詰める(日立に行ったときに無印リュックで行ったらやはりちょっと容量不足だった。山と道だと2泊でも行けそう。重さを感じなくてすごくいい)。今回の旅は北千住から特急で新桐生に行くルート。北千住の駅で特急の時間までプロントで小説を読む。特急の中で食べるおやつはぬかりなく持参していたけど、どうしてもおにぎりが食べたくて、おむすび権兵衛で鮭のおにぎりを買った。家から北千住まで1時間半。北千住から新桐生まで1時間半。おにぎりを食べて、少し小説を読んで、メールを書いて、デビルズアワーの続きを見て、としていたら、あっという間に新桐生に着いた。駅にはM田さんが迎えに来てくれていた。私はM田さんを見るといつも「今日もきゅるんきゅるんだなー!」と嬉しくなる。このオノマトペはM田さんを見たときだけ現出する。M田さんは身長が1センチ伸びたと言って喜んでいた。すごい。M田さんと落ち合うことになる前は、完全に一人行動だと思っていて、その場合はタクシーで桐生を巡ろうと思っていたんだけど、そのことをM田さんに言ったら「桐生にはタクシーが3台しかないからそれは難しい」と言われた。桐生は観光地じゃないし、土地の人は車を持っているから、タクシーが必要ないらしい。あぶなかった。次に桐生に来るときはレンタカーを手配したほうがいいかもしれない。M田さんの車に乗って、まずはROOSTERというラーメン屋さんに行く。化学調味料を一切使っていないラーメン。美味しかった。M田さんといろいろおしゃべりしながら食べていて、その中に「唐澤さん」という言葉がぽつりぽつり出ていたのだけど、それを聞いた店主さんに「唐澤さんのお知り合いですか」と聞かれ、店主さんは唐澤さんポストカードコレクションのようなものを見せてくれた。唐澤さんはラーメン屋さんでも顔。その後、ITOYA COFFEE FACTORYでの唐澤さん個展に向かう。私はこのお店に昨年来た時に、ここのオリジナルの、唐澤さんのイラストがついたコーヒーキャニスターをコーヒー豆用に買ったんだけど、すごくかわいいので、キャットフード用にもう一つ買えばよかった!!とずっと悔やんでいた。今回念願かなってキャニスターを追加で買うことができた。猫のごはん用なのでちょっと元気カラーのオレンジ。かわいい。ほくほくだ。展示を見る前にM田さんとお茶していると、こぐまブレッドさんから「今どこ?」というDMがあり、「イトウヤです」と返すと「すぐ行く」と返事が来て、本当にすぐ来てくれた。こぐまブレッドさんには今回会えないかなと思っていたので嬉しかった。展示は唐澤さんといえばおなじみの、といったかんじの、動物キャラクターの絵がずらりと並ぶ。TwitterInstagramで毎日のように見ているけど、この絵はITOYA  COFFEE FACTORYさんにあるとすごく馴染んでいて愛らしい。ということを昨年も感じたなと思い出す。一番大きい絵は、あのキャラクターでその大きさはないだろうという感じが、なんだか無駄に迫力があるところがトボけていて最高だ。もう少し小さい(といってもペン画よりはかなり大きい)8枚の絵があって、私はこれがすごく好きで、唐澤さんとお話しながらチラチラチラチラずっと見ていた。唐澤さんの色付きの絵を普段はあまり目にしないこともあるかもしれないけど、少し薄暗くて絶妙な色合いで構成されていて、そこに動物が描かれていると、物悲しさのような哲学のような、とても個人的な世界をそっと見ているような気持ちになって、私はそういう気持ちがとても好きなのだ。だからあの8枚の絵はとても好きなのだった。それから今回の旅の目的、オマドーンへ。オマドーンというギャラリーで開かれている『物語へ』という唐澤さんのあらたな試みの作品展だ。この作品展は物語にインスパイアされて描いた絵ばかりを展示していて、ITOYA  COFFEE FACTORYの展示にあったような動物の絵は一切なく、絵のテイストもかなり違っている。いろいろな小説を題材に描かれた絵はどれもとても素敵で、絵の下にその小説の抜粋がキャプションとして添えられているのだけど、それを読んでまた絵を見ていると、その小説がどうしても読みたくなる。実際、私はこの展示で使われた小説を、すべて読みたいと思っている。キャプションは、実は存在しない小説のものもあって、それに私たちるるるるんも参加させていただいた。架空の小説のあらすじを書いて、それを唐澤さんに絵にしてもらったのだ。UNIと3月クララのを見ると、あらすじというより詩のようで、この二人は言葉のセンスがすごいなと、身内ながらあらためて思った。私のはなんだかがっつりあらすじだった。こういうことじゃなかったんだろうか?!と今さらながらちょっと焦ったけど、でも唐澤さんがすごく素敵な絵にしてくれていたので、ものすごく幸せを感じた。自分の書いたものが絵になるって、そんな人生生きている人がどれだけいますか。キャプションは唐澤さんの手によるものもたくさんあって、唐澤さんの物語を産む才能にも舌を巻いた。今回の作品展に展示されていた作品数は40点以上だという。あまりにも多くの作品の、そのひとつひとつに物語が閉じ込められていて、こんなに物語好きの心を鷲掴みにする展示もないと思った。このキャプションのうちのどれかから小説を書かせてもらえないだろうかと考え始めている。作品を見ていると唐澤さんが現れて、ピアノの演奏をしてくれた!なんと贅沢な!演奏の最後の曲では歌も歌ってくれて、唐澤さんは歌も素敵だった。なんていうか、引き出しが多すぎる。この引き出しの多さに嫉妬を煽って、唐澤さんが誰かに刺されたりしませんように。オマドーンでは、前日にInstagramでるるるるんの作品について言及してくれていることを知ったネコタツさんにもお会いすることができた。ネコタツさんは、過去作も手に入る限り読んでくださっていて、力強い読み方をしてくださっていることに感動した。作品は、こんなふうに知らなかった人に届いている。奇跡の中にいるなあと思う。それにしてもオマドーン自体がむちゃくちゃ素敵な場所なので、るるるるんの二人にも絶対いつか行ってほしい。というか、この作品展を本当に二人に見てもらいたかった。オマドーンを後にして、私が行こうと目星をつけていたst companyで、唐澤さん、こぐまブレッドさんと晩ごはんをいただく。私はクリームスパゲッティにした。こぐまブレッドさんは結局一日一緒にいてくれたのだった。一緒にいることが嬉しいひと。st comapnyにあるものがかわいすぎて、今度来たらゆっくりお買い物したいな。その後、limpidという古民家カフェへ移動。おしゃれにもほどがあるだろうという古民家カフェ。そういう場所にばかり連れて行ってもらうからだろうけど、桐生のおしゃれ偏差値はやばい。オマドーンにいた唐澤さんのお友だちの女性も、75歳ということだったけど、ものすごく素敵で若々しかった。limpidにいたご高齢のご婦人も、すごく素敵な佇まいだった。おしゃれ魂に火がつく。limpidではよっきーさんも合流して、るるるるんとタソガレにさいんさせていただいた。よっきーさんのピアノもいつか聴いてみたい。こぐまブレッドさんに送っていただき、21時過ぎに東横インに着。こぐまブレッドさんが持っていたアトリエペネロープのバッグが素敵でやっぱり私も買おう!と、ネットで少し調べながら、テレビをつけず、睡眠薬も飲まず、眠った。

【UNI】昼前から阿寒湖へドライブ。
道の駅で蕎麦とかき揚げ。60代以上、というようなワイシャツの男性集団が道の駅の蕎麦屋を予約していて席がなく、しばらく待った。あとで珈琲屋さんで聞くとどこぞの市議会の団体だったという。みごとにおじさんばかりだった。こちらをじろりと見てきて気持ち悪かった。
珈琲屋さんでは「女性がみんな好きなのはフレンチショコラで」と言われ、はたして女がみんな同じ好みかな?というようなあまのじゃくなわたしが頭をもたげ、イルガチェフェにしてもらった。「イルガチェフェはこのコーヒー豆ができた村の名前なんですけど、ときどき、ロシア?って聞かれるんですよ。たとえロシアでコーヒーが採れたとしても買いませんけどね!」と言って店主は笑う。たしかにロシアは狂っているが、正しく選挙ができているとは思えない彼の地に住む人たちにまで白黒はつけられないという気持ちもあって、あいまいな笑みを浮かべてしまう。そもそもイルガチェフェはロシアの村じゃないし。
とにかくコーヒーはおいしかった。
阿寒湖の湖畔に行くまでのアイヌコタンで土産物屋をまわる。おじさんがムックリという口琴を鳴らして説明してくれる。竹でできていて、ビヨヨンとかヨヨヨヨヨンとか鳴らせるアイヌの楽器だ。この辺りには竹は育たないからどうしてたんですか?と尋ねると、函館のほうでは竹があるからそこから調達していたのでは、というような話だった。それに今は竹だけど、違う木でも……と割とぼやかしたような説明をしてくれた。まあお土産屋さんは学芸員さんではないので、あまりいろいろ聞いても申し訳ない。ムックリは買わずに、木彫りの模様入りの菜箸を買った。実用的な自分みやげ。店頭で、韓国からの観光客とお店の人とわたしでひとこと程度ことばをかわした。わたしのカバンの中には韓国のハン・ジョンウォンの本が入っていた。“これ!読んでるんです!あなたの国の本!”
なんて言う時間も考えも無く。あとからふと、ああ韓国の本がカバンに入っていたなぁと思い出した。
阿寒湖は湖なのになぜか潮の香りがしたような気がした。ちゃぷちゃぷという音が心地いい。スマホで写して、歩いて、また写して、と楽しんだ。阿寒湖からの帰り道、国道沿いに立派な角をもつエゾシカを何頭か見た。悠々としてかっこいい。この辺りの道は白樺は少なくて、割と本州に似た見た目の道だった。網走川が流れていて、ずいぶん長い川なんだなと驚く。途中には牛が放牧されている。玉ねぎは収穫されて四角い大きなかごに詰められて、何十箱も畑の上で乾かされている。かぼちゃは今が収穫期のようだ。北海道は本当に広い。ここにアイヌの人たちが暮らしていて、本州から開拓民が入って、と想像してみるんだけど、この広くて寒い土地での大昔の日々がやっぱり想像を超えている。

【クララ】遅番。反省して小説を一旦引っ込める。朝は意外とスッキリ起きられし、日中眠くもならなかった。休憩中に鵼の冒頭を少し読んだ。イントロが長すぎる。音楽や動画配信を2倍速で鑑賞するタイプの人なら耐えられない長さ。読書も倍速にできるのか。終業後、ファミマで荷物(パフュームのTシャツ)を受け取り、栗きんとんアイスを買ってすぐに食べた。今年は芋栗スウィーツが豊富。

文芸ユニット るるるるん
新刊『るるるるんvol.4 ー付箋ー』発表! 
付箋小説・旅日記・座談会などもりだくさんです。
『るるるるん vol.3 ー鏡ー』も発売中。

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