lulululunlulululun’s diary

文芸ユニットるるるるん。 UNIとかとうひろみは3月クララと走りだす

ベリショーズ「ショートショートnote」

今回のベリショーズ、お題は「ショートショートnote」。なんですかそれは?!と、意味がわからなかったのですが、なるほど、そんなものが……!お題で小説を書く文芸ユニットるるるるんも、今回の新しい試み、興味津々です。それはそうと、今回の表紙のベリショちゃん、いつにも増してかわいくないですか。ときめく……。では感想スタートです!

 

「ホームランアレルギー」ぱせりん

お題は「ホームラン」と「アレルギー」で「ホームランアレルギー」。直球!笑。でもその直球さがすごく読みやすくて、読みやすいというのって文章がうまいことに他ならないんですよね。抜け感もちょうどよくて。ぱせりんさんにはショートショートnoteは朝飯前というかんじ。楽しかったです!

 

ムロアジの野望」秋田柴子

お題は「燻製」と「下克上」。ベリショの中でもかとうのお気に入り作家上位に入る秋田さん、今回は……。魚と魚節についてなんでこんなに詳しいのか!それだけで秋田さんがさらに大好きになってしまいます。静まり返った廊下をひたひたと歩くムロアジとサバ。もう、もう、エモい!お話は奇想天外。こんな下剋上、見たことない。面白かったです!魚意〜!

 

「燻製下克上」まゆみ@

お題はまたしても「燻製」と「下克上」。さて秋田さんの後でどう出る……?とページをスワイプすると、黒玉子侍きゃわ〜!嬉しいフェイントが待ってました!えすでぃじぃず強い!

 

「ミスター・あたりまえ」ロッサ

お題は「光を放つ」と「あたりまえ」。このお題は難しい。でもよく考えるときちんと光と影を表していて、それをロッサさんはちゃんとわかってるんですよね。ロッサさんには全然難しいお題じゃなかったみたいですね。

 

「伝説」田辺ふみ

お題は「光を放つ」と「あたりまえ」。アイデアが、ショートショートの手練れだなあと思います。「光を放つ」で、まさか具体的に光を放つというアイデア。すごく面白い。どうなるのかとワクワクしながら読みました。笑うセールスマン的な結末を迎えがちなショートショートの中にあって、こういう終わり方もあたたかくてとても好きです。タイトルもいい!

 

「一滴の」たけなが

お題は「光を放つ」と「あたりまえ」。え?このお題めちゃくちゃ多いですね。このお題の正解のような小説だと思いました。ストーリーはしっかりとあって、アイデアも散りばめられているのに、散文詩のような心地いい美しさがあります。きれいなものを読んだなあという読後感。

 

「サブスク光」創樹

お題は「光を放つ」と「あたりまえ」。またこのお題だ!すごい人気だ。かなり難しい気がするんですけど、ベリショのみなさんすごいな…。創樹さんのこちらの作品は、もう少し長くてもいいくらいの濃い内容で、最後にこのお題を見ると、ものすごく切ない気持ちになりました。これはもう、拍手拍手!

 

「Le ciel・さよならの地点」ことのは もも。

お題は「おっちょこちょい」と「転がし」、さらに「誰も知らない」と「カミングアウト」。掌編をふたつです。「Le ciel」はとてもきれいな物語。外国のファンタジーみたい。こういうのをサラリと書けるのがことのは もも。さんの品の良さとセンスなんですよね。素敵。もうひとつの「さよならの地点」はまったく違う物語。さらりとしているのに読後感にシンとした悲しみが押し寄せるのは、もう、職人の技ですね。みごとだ……。

 

「のおとーうぶごえのkey」新出概出

お題は「おっちょこちょい」と「転がし」、「燻製」と「下克上」、「危機一髪」と「自己紹介」、「光を放つ」と「あたりまえ」、「道ばたで見つけた」と「部」、「ネコ」と「の意外な使い方」、「ホームラン」と「アレルギー」、「ゾンビ」と「法」、「誰も知らない」と「カミングアウト」、「失恋」と「ダウンロード」。ぜいぜい。お題を書き写すだけで大変だわい!!実力者だからって面白くなかったら許さないよ!!……と、鼻息荒くしながら読んだんですが……掛け値なしに傑作です。すごい。この膨大なお題にぜんぶ応えたからではなくて、もちろんそれもじゅうぶんすごいけど、どこからどこまでびっしりと言葉で埋め尽くして世界を創造し、そしてぜんぶ収斂して内側に落とし込み、あれだけ散らばった言葉がどこにも跡形も居なくなって世界が空白になる。この世界観、とんでもないと思いました。すごいセンス。脱帽しました。震える。

 

「もてあます」たらはかに

お題は「誰も知らない」と「カミングアウト」。

ストーリーを創造する力はもう御大というか、さすがなのは言わずもがななんですが、「器用さなんて枝豆の皮程の価値だ」とか「皮膚の奥に隠れているホクロみたいなこの感情」みたいな表現が、作家だなー!と思います。言えますか?無価値なことを枝豆の皮程なんて。ショートショートの肝と言えるオチもさすがですね。たらはかにさんの弱点、ちょっと見当たらない。

 

「?・アイ・アール・イー」undoodnu

お題は「誰も知らない」と「カミングアウト」。

主人公の奇妙な行動は、小松左京ショートショートSFみたいに、不穏な空気の影に不謹慎な心のときめきを感じてしまいます。そして唐突に訪れる結末。この風合い、大好きですね。これあんまり一般受けはしないかもしれないけど、一部に熱狂的に支持されるタイプの、私としてはかなり熱い作品です。

 

「青い絵本」さささ ゆゆ

お題は「誰も知らない」と「カミングアウト」。このお題、かなりツボなことがわかってきたところで、間違いないささささんの作品、来た!表現の力がさすがなんですよね。例えば作中に絵本の描写があるけれど、文字だけで、その絵本の色彩や絵の感じや、そんなものがやすやすと想像できる。そしてささささんらしい丁寧さと品があって、ささささん自身、本当に心がきれいな人なんだろうなといつもご本人に思いを馳せてしまうのです。

 

「たたかえ!プレミアムマン」makihide00

お題は「誰も知らない」と「カミングアウト」。異色!ショートショートってちょっとひねくって落とす、みたいな、イヤミス的読後感のものが多いと思うのですが、ベリショ全体を見ても、その固定概念を覆すものが多くて、そういう意味でもベリショのみなさんいいなあと思っていて。で、こちらはその最たるものですね。ひたすら明るく!くだらなく(褒めてます)!こういう作品って、ショートケーキの上のイチゴみたいですね。

 

「400字の物語〈お題全7話〉」豊丸晃生

お題は「おっちょこちょい」と「転がし」、「燻製」と「下克上」、「光を放つ」と「あたりまえ」、「道ばたで見つけた」と「部」、「ホームラン」と「アレルギー」、「ゾンビ」と「法」、「失恋」と「ダウンロード」。来たぞ複数お題。このタイプは猛烈手練れです。要注意。と思ったら、案の定、ショートショートのお手本みたいな作品が並んでいました。これ言うのは禁じ手だけど、その風合いは星新一。それってすごくないですか?

 

「GAKEROU」UBEBE

お題は「危機一髪」と「自己紹介」。まさかの、主役が崖。「全員突き落としたろかワレ!」と「寝言は寝てから言うんだな」ってセリフが最高。真似したい。とにかく崖がかわいいのです。設定ですでに勝利する、ベリショ常連の実力者の貫禄!

 

「訪問者」渋谷獏

お題は「ゾンビ」と「法」。さすがというか、もう全然引っかかりがないんですよね。すごく読みやすくて、面白くて、アイデアも楽しい。オチもばっちり。獏さんの作品て、とても完成度が高いのに安心できる、作品集には絶対にあってほしい貴重な一編なんですよね。こういう人はすでにショートショートメソッドのようなものを確立してるんだろうな。クレバーさを感じる人、獏さん。

 

「魍魎」むう

お題は「ゾンビ」と「法」。むうさんの作品、まずは正座です。ベリショの中でも連作という特異なスタイル。今回も、いちばん楽しみにして待ってました。百鬼夜行抄的な世界がショートショートという世界で繰り広げられる腕の凄さ。いや本当にうまいなあ。うまいというのもなんだか失礼なような。ファンの人、たくさんいるんじゃないかな。できるなら、京極夏彦くらいの分厚さの長編小説を読んでみたいとずっと思ってます。むうさんなら、できますよね?

 

「ノイズ」右左上左右右

お題は「ゾンビ」と「法」。面白い!王道ゾンビ映画だ!小説でこういう存在ってなかなか稀有というか、多分こういう面白さを小説で表現しようという人があんまりいない気がします。ショートムービーにしたら面白そう。大満足の一編。

 

「iT'S A PiGGY BACK RiDE E.P. 〜四つの小さな物語〜」壬生乃サル

お題は「おっちょこちょい」と「転がし」、「燻製」と「下克上」、「危機一髪」と「自己紹介」、「光を放つ」と「あたりまえ」、「道ばたで見つけた」と「部」、「ネコ」と「の意外な使い方」、「ホームラン」と「アレルギー」、「ゾンビ」と「法」、「誰も知らない」と「カミングアウト」、「失恋」と「ダウンロード」。来ました、全お題挑戦者。ベリショ強豪作家たちとのコラボも!これは豪華!一発逆転で美人な彼女ができた野獣は、のくだり、ありそうすぎて爆笑。それにしても、作品でコラボしてもベリショのみなさんは本当に息があってる。いつも羨ましく思ってます。

 

「猫か虎か」椿あやか

お題は「ネコ」と「の意外な使い方」。どうでもいいんですけど、固有名詞をアルファベットで表すのって、なぜか昔からぐっと来るんですよね。お話はもう椿さんのことですから面白さは保証済み。猫大好き人間の私(かとう)としては、猫好き人間の夢みたいなショートショートラに会ってみたい!

 

「恋心クラウドサービス」のりてるぴか

お題は「失恋」と「ダウンロード」。男性の恋は『別名保存』、女性の恋は『上書き保存』なんて言うけれど、女性が上書き保存をするのは辛い恋の記憶を抱えて生きていけないからだ。って、全人類耳の穴かっぽじってよく聞けよー!って思った名文ですね。お話はかわいいラブストーリー。SF風味なラブストーリーってのがいいなあ。

 

パンドラの箱は誰のもの?」ハナヅキアキ

お題は「失恋」と「ダウンロード」。喪失願届!こんな恐ろしいシステム、よく思い付きましたねえ。お話は秀逸な青春物語。一度は通るこういう道に、そんなシステムがあったら。すごく切なくて、瑞々しい一遍です。このシステムを使った別の物語も読んでみたくなります。

 

「ハートブレイク」高野ユタ

お題は「失恋」と「ダウンロード」。たしかに「失恋」という言葉より、「ハートブレイク」という言葉のほうが意味を考えると怖いなあ……。で、ハートウォーミングなラブストーリーかと思いきや、結末は……。怖い。でも面白い!これぞショートショートの醍醐味、というストーリーですね。ベリショ優等生!

 

「宿題」UKITABI

お題は「道ばたで見つけた」と「部」。部分集合という言葉をこの小説で初めて知ったあほんだらは私です……。飄々とした会話と空気がすごくいいなあ。こんな二人、本当にいそうですね。中編の私小説なんか書いてほしい!

 

「キングオブカリー」そるとばたあ

お題は「道ばたで見つけた」と「部」。そるとさん来たあー!ちょっとファンですからね。正座ですよ、正座。そるとさんの作品を読んでいつも思うのは、出し惜しみのなさなんですよね。描写に隙がなくて、長編小説の一部みたいにも思えるんだけど、そるとさんにはこの長さがやっぱり一番合っている気がします。たまに、大人になっても読み返したくなる児童文学とか、ヤングアダルト小説ってあるけど、そるとさんにはそういうものを感じるんですよね。優しくて面白くて、いきいきしてて。ぜひその道の作家になってくれないかなあ。応援してます!それにしても、カレー食べたい。

 

「今宵も悪夢の片隅で」風月堂

お題は「道ばたで見つけた」と「部」。そるとさんも言葉の力で世界をまるごと作れる稀有な才能だけど、そのそるとさんを陽とするなら、風月堂さんは陰ですね。それもかなり濃い。悲しくて残酷なイメージは、横尾忠則のアートみたいにクッキリした色で世界の隅々まで覆い尽くしてしまいます。ショートショートでこんな濃密な世界観てすごい。そして品があるんですよ。文章が上手いからなんでしょうね。出口の見えないラストも、悲しくて美しい。

 

「星屑商會」すみれ

ここからはお題なしの自由テーマです。星屑商會というお店をキーにした連作短編です。ショートショートの中の短編だから、一つ一つが本当に短いのですが、星屑というキーワードとも相俟って、その一つ一つがまるで金平糖のように儚くて、綺麗で、淡くて、かわいらしいのです。日々に疲れている人に染み込むような素敵な連作です。

 

「穴造と月の女神」10101298

10さん全然出てこないなーと思ったら、ここにいたのかい!やっぱり文章の端々にかわいらしさがあるんですよね。それが癖になるというか。10さん、不思議な人だ。顔はめパネルに表側から顔をはめるというアイデアさえかわいらしい。嫉妬。結末まで読むと、くっだらねー!と思うんだけど、バランス感覚半端ないし、うまいし、10さんて結局むちゃくちゃ賢いんだろうなと思います。本当はなんとか賞だって余裕で受賞できるシリアス作品だって、しれっと書いちゃうんでしょ?

 

「額縁生活」イチフジ

ここまで読んできて、なぜか絵を題材にした作品が多いなと気づきました。小説を書く人は絵を描く才能に憧れるものなのでしょうか。ちなみに私(かとう)が描いた地獄のような似顔絵を見たい人は連絡待ってるよ!それはさておき、バケツを倒したあとの顛末が、ものすごく美しくて怖いんですよ。このシーンの秀逸さ、もしかしたら今回のベリショ随一かもしれない。ネタバレしちゃうからどんなシーンかは書けないけど、すさまじく素敵でした。こんなシーンを自分で書いてみたい!

 

「山神と少年・山神と熊・山神と猟師」夕辺歩

たしかな語彙力と文章力に圧倒されます。本当に短い短編3つ。そのどれもが珠玉です。匠。素晴らしいです。すべての命が尊くて、どの人間も動物も生きるために生きている。名作すぎます。心の底から拍手を送りたい傑作です。

 

最後は高野ユタさんと椿あやかさんの対談です。もうこれは、ふたりのショートショートの天才の素顔が見られるチャンス。参考になることもたくさんあって、あーなるほどなるほど。強い人は面白い。それをあらためて感じました。

 

というわけで今回もベリショーズ、みなさん本当に素晴らしかったです。お疲れ様でした!るるるるんもvol.4の発行目指してがんばるぞー!